とりあえず町のメインストリートのほうへ足を進めながら、恋し浜の海岸を左手に元樹君と並んで歩く。


 野乃や元樹君が通う邦陽高校は、男子は学ラン、女子はセーラー服だ。


 白無地のワイシャツにタイトな黒パンツを合わせ、腰回りにこげ茶色のショートエプロンを付けた渉が学ラン姿の元樹君と並んで歩くと、あまりにミスマッチな二人組すぎて、渉は少々、居心地が悪くなる。


 要は、けっこう恥ずかしいのだ。


 かたやこちらは三十路手前のしがないコーヒー店の店長で、かたや向こうはキラキラ輝く高校生。


 十二歳も年下の男の子を相手に不思議なのだけれど、その若さに尻込みしてしまう部分がある。


「あ、渉さん。あそこにいるの、野乃と……」


「うん。さっきまでウチにいたお客さんみたいだね」


 そんなことを苦笑混じりに考えているうちに、元樹君が目当ての人物を発見した。


 彼の視線の先を辿って言葉を引き継ぐと、朽ちた流木に腰掛けて話し込んでいる女性二人の姿が、シルエットのように浮かび上がっていた。


 文香さんの足元には、大きめのボストンバッグがひとつ。コーヒーを飲んでから帰ると言っていたし、今日、店に来たときは、昨日と同じ軽装だった。