「大学時代の最後の飲み会で、みんなでふざけ半分で決めたんですよ。三年経っても金魚が生きていたら、その人同士はもう金魚が選んだ運命の相手なんだから結婚だ、って」


「……それはまた、思いきったことを」


 渉がどう返したらいいか考えあぐねてそれだけを言うと、文香さんは、


「ほんと、そうですよね。お酒が入っていたからって、金魚に運命の相手を決めてもらうなんて、ちょっとバカでした。もちろん、男同士、女同士だった場合は無効ってことになりましたけど、残った金魚が男二人に女一人なんていう複数の場合はどうするのかは、だいぶお酒が入っていたので、あやふやままで終わって……。あ、でもみんな、生き物の面倒を最後まで見る優しい人たちです。だから倶楽部が成り立ってて」


 と、最後のほうはやや焦ったように言った。


 きっと、生き物をそういうことに使ってしまった負い目からくるものなのだろう。


 渉は大丈夫ですよと目を細めて、


「わかってます」


 一つ、ゆっくりと頷いた。