彼女がまた意を決したような声で口を開いたのは、渉がいつもの椅子――カウンターの中にある休憩用のそれに腰掛けたときだった。
「昨日はほかにお客さんもいたし、話を聞いて来てはみたけど、なかなか勇気が出なくて」と彼女は言う。
「ええ、もちろん。僕でよければお伺いさせていただきます。でも、昨日言ったように、僕には何の力もありません。それでもよろしければ、お聞かせいただけたらと思います」
そう言うと彼女は「構いません」と微笑し、先ほど手帳に挟んだ写真を取り出した。
「私が勝手に話すだけです」
彼女――新藤《しんどう》文香《ふみか》さんには、大学時代から卒業して三年経つ今でもよく集まるサークルのメンバーがいるという。
男女合わせて七人で、男性が三人、女性が四人の、〝金魚倶楽部〟という名前の一風変わったサークルだったそうだ。
その名の通り縁日で取った金魚を飼育するという地味な活動内容で、大学側からは非公認だったらしい。
今でもそのサークルがあるかはわからないけれど、と前置きした上で、文香さんは「卒業のときにみんなで分けた金魚、私のは死んでしまって……」と言う。
「昨日はほかにお客さんもいたし、話を聞いて来てはみたけど、なかなか勇気が出なくて」と彼女は言う。
「ええ、もちろん。僕でよければお伺いさせていただきます。でも、昨日言ったように、僕には何の力もありません。それでもよろしければ、お聞かせいただけたらと思います」
そう言うと彼女は「構いません」と微笑し、先ほど手帳に挟んだ写真を取り出した。
「私が勝手に話すだけです」
彼女――新藤《しんどう》文香《ふみか》さんには、大学時代から卒業して三年経つ今でもよく集まるサークルのメンバーがいるという。
男女合わせて七人で、男性が三人、女性が四人の、〝金魚倶楽部〟という名前の一風変わったサークルだったそうだ。
その名の通り縁日で取った金魚を飼育するという地味な活動内容で、大学側からは非公認だったらしい。
今でもそのサークルがあるかはわからないけれど、と前置きした上で、文香さんは「卒業のときにみんなで分けた金魚、私のは死んでしまって……」と言う。