まだ再会して二日目なので仕方がない部分も多いけれど、身内の野乃だってあの通り、ある一点については頑なに心を閉ざしている。


 むしろ同い年なぶん、元樹君のほうが一歩リードというところかもしれない。


 悔しくないといえば嘘になる。


 渉はそんな、どこにでもいるコーヒー店の店主なのだ。


「……そうなんですね。なんか、変なことを聞いてしまってすみません」


「いえ。よろしかったら、お代わりのカプチーノ、いかがですか? サービスです」


「え、いや、そんな……」


「もう淹れてしまいましたから。嫌でなければ、もう少しごゆっくりしていってください」


 そう言うと、女性はすっかり恐縮してしまいながらも二杯目のカプチーノに丁寧に礼を言い、ゆっくりと飲み終えると何度も頭を下げつつ帰っていった。


 店の噂を頼りにやってくる人の中には、初めて会った渉を相手にあまり時間をかけずにすべてを話していく人もいれば、何度か店に足を運んでから話す人もいる。


 先ほどの女性はどちらだろう。


 見たところ手荷物はバッグひとつだったので、日帰り旅行の可能性と、近くの旅館に泊まる可能性と、どちらもありそうな気がする。


 と。


「あ、お忘れ物だ……」