「えー? 何言ってるんですか、たっぷりオーダーを取ってきたんですから、ちゃっちゃと働いてください。お客様が待ってるんです、あのギラギラの真夏の太陽の下で!」


 しかし野乃は、びしっと店の外を指さすと、無情にもオーダーを取ったメモ紙をカウンターに並べていった。


 ものの見事にアイスコーヒーだらけ。店内にいるとわかりにくいけれど、今日もとびっきりの真夏日だ。冷たいものが飛ぶように売れていく。


「う……それはさぞかし冷たいコーヒーが美味しいよね。わかった、もうすぐお昼時も過ぎるし、そしたら野乃ちゃんもちゃんと休憩しよう。午後にはみんなも応援に来てくれるんだよね? それなら野乃ちゃんは店の中で洗い物を中心に頼むよ」


 見違えるように明るく、そして強くなった野乃に気圧されつつ、時計で時刻を確認しながら午後の予定も組み立てていく。


 幸い三人とも一教科だけだ。補講が終わったその足でお腹を空かせながら来てくれるだろう。それまでに賄いの準備もしておかなくては。


 わかりました、とにっこり笑って、野乃がしばしの休憩にカウンター席に腰を下ろす。