「うん、そうだね。知世もどこかでそれを読んでくれているといいんだけど。こればっかりは、そうあってほしいって願うしかないね。……ああ、もう。最後の最後まで知世に振り回れっぱなしの恋だったなぁ。次にするなら振り回す恋じゃないと、なんか俺的に納得がいかないよ……。でもまあ、振り回されるのは俺の性分なんだろうけどさ」


「じゃあ、どっちが先に恋人ができるか、勝負しません?」


 すると、たはは……と苦笑している渉に思わぬ挑戦状が叩きつけられた。


 目を瞬く渉に野乃は不敵に笑って「もしかして勝つ自信がないんですか?」と煽り立てる。


 お互い、新しい恋をしようと思えるようになったことは大進歩だ。


 でも。


「ちょっとそれは聞き捨てならないね。俺が本気出せはすぐだよ、すぐ」


 こんなに煽られて。しかもまだ十六歳の女子高生に胡乱な目を向けられて、大人しくしていられるわけがない。


 モテないこともないのだ、渉は。……狭い範囲でだけれど。


「本当ですか? なんか若年寄っぽいんですよね、渉さんって。本当にすぐできます?」


「……なっ!」