野乃はあれからすぐに元樹君たちに前の学校での出来事を話し、親身なアドバイスを受けて七緒と寺島君に手紙を送った。


 今でもときどき前の学校の担任から自宅に電話があるそうで、叔父夫婦にも不登校(学校に行けないのではなくて行かないのだから登校拒否だというのが野乃の主張だ)の訳と、だから手紙を送るために住所が知りたいことを伝え、元担任から二人の住所を教えてもらって、手紙を出すに至ったのだ。


 消印は恋し浜に一つだけある郵便局からのもの。けれど、差出人の名前はあるが、住所までは書かないことにしたらしい。


 その気になれば消印を辿って訪ねて来られるだろう。野乃だってまるっきり二人と連絡を絶ちたいわけではないのだ。


 この案は、案外一番双方の気持ちを汲み取る力に長けていそうな三川さんからのアドバイスかもしれない。


 体育祭のことでぐんと視野が広がった三川さんは、態度や言葉遣いこそツンツンしたところがあるけれど、すっかり野乃のことが大好きになっている。


 もちろん渉は、手紙の内容は知らない。でも、友人たちの力を借りて手紙を出したことだけは教えてくれて、そのときの野乃の顔はとびきり可愛い笑顔だった。


「お待たせしました」