「ちょ、ちょっと待って野乃ちゃん。何がやっとわかったの? 何か調べてたっけ?」


 興奮冷めやらぬ様子の野乃とは打って変わって、渉は宥めるようにドードーと手のひらを野乃に向けて、とりあえず落ち着こうとジェスチャーした。


 だって、ざっと思い返してみても、これといって心当たりはないのだ。何やら渉に関係することのような口振りだが、当の渉は野乃のあまりの勢いに若干、負けてしまい、多少なりとも笑顔が引きつってしまう。


 一体全体、何がわかったというのだろうか。野乃に調べものを頼んでいた覚えはないのだけれど……。


「忘れたんですか? 渉さんが知世さんの話をしてくれたときに、私、少し調べたいことがあるって言ったじゃないですか。私だってあれからずっと気になっていたんです。どうして渉さんに何も言わずに行ってしまったのか。渉さんがそれでいいなら、調べたりはしないつもりだったんですけど……やっぱり引っかかったままですよね?」


「え、わかったの?」


 目を見開く渉に、野乃が控えめに頷く。


 さっきまでの威勢の良さはどこへいってしまったのだろうか、上目遣いにコクリと頷いた野乃は、とてもしおらしい。