「……私も、寝る前に少し、前のことを整理したんです。何も言わずに転校までしちゃいましたし、登校拒否をはじめてからは連絡なんて一つも取っていませんでしたけど。せめて元気でやっているってことだけは伝えようかなって。そう思うんです」


 すると、野乃も照れくさそうに笑って朝食の席に着く。


 テーブルにはすでに、二人ぶんのクロスの上にサラダとフォークと、その間にドレッシングやお裾分けで頂いたパン、バターや、それから牛乳とコップが二つ、セッティングされている。


「汐崎君たちにも話してみようと思ってるんです。もうじき夏休みですから、今年の夏はみんなでたくさん遊びたいなぁって。もっと仲良くなれたら、きっと楽しいです」


 コポコポと二人ぶんの牛乳をコップに注ぎながら、野乃が言う。


「私もようやく気づくことができたんですよ、私のことを思ってくれている人で世界は溢れてるって。両親も、渉さんも、汐崎君たちも。……七緒や寺島君だって、私がいつまでも元気がなかったら、心にしこりを残したままなんじゃないかなって」


 牛乳で満たされたコップが、渉のぶん、自分のぶん、と置かれていく。