気づいたのだ。


 ここにはもう、知世以上に大切なものがたくさんあって、そういうもので溢れているから、続く限りここを守っていきたいと。


 〝身動きが取れない〟のではなくて〝この場所〟が自分がいるべき場所なのだということに、二年かかってようやく気づけたし、納得のいく答えが出せた。


 それでも野乃の目は物言いたげに揺れていた。本当にいいのか、と言うように。


「彼女には、出会ったときから最後まで、ずっと振り回されっぱなしだったんだ。これが俺の、どういう結末だったらいいと思うかっていう野乃ちゃんの質問の答え。もう戻ってこないことはわかってるし、今さら戻ってこられても、うちはもう定員オーバーだ。二年も引きずったままだったけど、俺には俺のやりたいことがある。野乃ちゃんが止めても、俺はこれをごみステーションに出しに行くよ。……たまには格好つけたいんだ、俺も」


 ――だから止めないでよね?


 そう目で訴えかけると、途端に野乃の目がふっと細められた。


 ――渉さんがそれでいいなら。


 そんな声が聞こえてくるような、野乃の腫れぼったい目だった。