そんな些細な思い出さえ、今までは思い出すのもつらかったけれど、知らず知らずのうちに渉も変わっていたということなのだろう。
見るとつらくなるから、クローゼットの奥にしまい込んだまま、手を付けることができなかった彼女の残していったもの。
それをごみ袋にまとめても涙の代わりに笑顔が出てしまうのだから、保護猫の影響力は凄まじい。
願わくば、野乃にもそうあってほしいと渉は思う。
抱えていた荷物を少しでもここに広げることができたなら。そして改めて二人でコーヒーを飲むことができたなら。
それはきっと、切なくも優しい恋の結末になるだろう。
翌朝。
女物の服と、いつかのキャットフードの箱が透けて見えるごみ袋が店内に無造作に置いてあるのを見て、起き抜けの野乃が腫れた目を大きく見開いて言った。
「……それ、どうしたんですか?」
「ああ、これ? ……うん。今日はちょうど燃えるごみの日なんだよね。もう食べられないし、猫もいない。服も俺が着るわけにもいかないから、処分してもいいかなって」
ちょうど朝食に目玉焼きを作っていた渉は、フライ返しを片手に少し照れながら野乃に眼鏡の奥の目を細めて笑いかける。
見るとつらくなるから、クローゼットの奥にしまい込んだまま、手を付けることができなかった彼女の残していったもの。
それをごみ袋にまとめても涙の代わりに笑顔が出てしまうのだから、保護猫の影響力は凄まじい。
願わくば、野乃にもそうあってほしいと渉は思う。
抱えていた荷物を少しでもここに広げることができたなら。そして改めて二人でコーヒーを飲むことができたなら。
それはきっと、切なくも優しい恋の結末になるだろう。
翌朝。
女物の服と、いつかのキャットフードの箱が透けて見えるごみ袋が店内に無造作に置いてあるのを見て、起き抜けの野乃が腫れた目を大きく見開いて言った。
「……それ、どうしたんですか?」
「ああ、これ? ……うん。今日はちょうど燃えるごみの日なんだよね。もう食べられないし、猫もいない。服も俺が着るわけにもいかないから、処分してもいいかなって」
ちょうど朝食に目玉焼きを作っていた渉は、フライ返しを片手に少し照れながら野乃に眼鏡の奥の目を細めて笑いかける。


