「そりゃ、どんなに塩対応されても、食らいついていくつもりだけど。だってあいつ、こっちの知り合いっていったら渉さんくらいだし。……って言っても、俺もまあ、知り合いってほどでもないんだけど。でもなんか、ちょっと放っておけないじゃん」


 強引に話題を変えると、元樹君もそれ以上追及せず空気を読んでくれたようだった。


 店の売り上げを心配して毎度律義に代金を置いていく源蔵さんと同じである。


「ありがとう」


「いや、もともと俺、親父たちに似て世話焼きだし」


「そうだね。今日も鰹を一本、いただいちゃったし。ほんと、いつも助けてもらってる」


 言うと元樹君は「親父が捕った鰹、マジ美味いよ」と言ってニッと笑った。


 その顔も源蔵さんとそっくりで、渉は、やっぱりここの人たちが好きだなと改めて思う。


「じゃあ、俺はこれで。ごちそうさまでした。野乃によろしく言っといてください」


 スプライトを飲み干すと、そう言って元樹君は帰っていった。


 リンリン、と軽やかにドアベルが鳴り、元樹君の姿もその向こうに消えていく。


 坊主頭なのは単にシャンプーが楽だから、という理由らしい。彼は部活には所属せず、源蔵さんの漁を手伝っている。