とりわけ野乃は、望まぬ形でその渦中に引きずり込まれてしまった側だ。板挟みに合った野乃の精神的負担は、どれほどのものだったのだろうか……。
野乃はきっと、数えきれないくらいの後悔を重ねているのだ。
あのときから今までずっと。十二年ぶりに再会して、すっかり悲しく笑う癖がついてしまったみたいに。
そんな野乃を誰が責められるというのだろう。七緒も寺島君のことも、責められるわけがない。
しかし野乃は、勢いよく頭《かぶり》を振る。
「私のことを許さないでください……っ。さっき、結局打ち明けられなかったって言ったじゃないですか。上手くやれなくて、こんがらがって、こじれてしまって。もう私の手には負えなくなって、でも言う勇気も出なくて。とうとう私、全部を放って逃げ出したんですよ。そういう汚い心を渉さんには見せたくなかったんです。……渉さんは、コーヒーで人を癒す人だから。そんな渉さんには、どうしても言いたくなかったんです……」
「野乃ちゃん……」
野乃はきっと、数えきれないくらいの後悔を重ねているのだ。
あのときから今までずっと。十二年ぶりに再会して、すっかり悲しく笑う癖がついてしまったみたいに。
そんな野乃を誰が責められるというのだろう。七緒も寺島君のことも、責められるわけがない。
しかし野乃は、勢いよく頭《かぶり》を振る。
「私のことを許さないでください……っ。さっき、結局打ち明けられなかったって言ったじゃないですか。上手くやれなくて、こんがらがって、こじれてしまって。もう私の手には負えなくなって、でも言う勇気も出なくて。とうとう私、全部を放って逃げ出したんですよ。そういう汚い心を渉さんには見せたくなかったんです。……渉さんは、コーヒーで人を癒す人だから。そんな渉さんには、どうしても言いたくなかったんです……」
「野乃ちゃん……」


