おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

 野乃のことが本気で好きだからこそ、あそこまで態度を翻せたのかもしれないと感じる一方で、少し自分本位というか、苛烈なところもある男の子のように思う。


 それは野乃が彼を怖いと思う理由に十分に値すると思う。実際、渉も背筋が薄ら寒い。


 それでも、彼は彼で野乃に筋を通していたのだろう。俺はこれだけお前が好きなんだというアピールだったのかもしれない。


 野乃には逆効果で、むしろ野乃を苦しませるだけだったわけだけれど、寺島君にはこれしか方法がなかったのだろうと思うと、彼も切ない。


 そんな彼の変化に比例してクラスの目も変わることも、悲しいけれど納得できた。


 前に元樹君が言っていたように〝スクールカースト〟が以前の野乃のクラスにも存在していたとは思いたくない。でも、彼はクラスのムードメーカー的存在だったという。


 一種の畏怖のようなものがそこにはあったのかもしれない。


 クラスの中心人物がそれまでと様子が違うようになったのなら、周りはそれに順応していくのが〝ムード〟を〝メイク〟することのできる人――メイカーが持つ影響力というものなのかもしれない。