おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

 野乃は話さないが、元来彼女は人の心の機微にとても敏感な子なのだ。それだけ思慮深い子だというのも確かだろう。


 七緒が寺島君と仲良くなっていく野乃を見て、自分のためにしてくれていることだとわかっていても、どうしても嫉妬したり妬ましく思ったりしてしまう気持ちがあったのにも、野乃は気づいていないわけではなかっただろう。


 七緒の性格を考えると、それを野乃に言えずに溜め込んでしまっているだろうことも、野乃はきっと早い段階で気づいていたはずだ。


 感謝しているけれど、同時に嫉妬もしてしまう。筋違いの嫉妬をしてしまうことで、七緒が自分自身を許せなくなっていく――そんな彼女の心の動きが、野乃にはきっと手に取るようにわかってしまったのだろう。


 だから引き際を計っていたのだ。早く彼と〝普通〟のクラスメイトの距離に戻らなければと焦っていたのかもしれない。


 そんなときに、一足早く彼からの告白。


 しかも彼は、すっかり野乃に好意を寄せてしまっていて、自分の気持ちに応えられないのは友達のせいかとまで言うような、いい意味でも悪い意味でも自分に自信のある男の子だった。