おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

 限界だったのは、お互い様だ。


 寺島君に頭を冷やしてもらうためにも、クラスに自分がいない日を作るのは有効的かもしれないと、野乃はそこまで考えたのかもしれない。


「だけど、長期休みは心が折れるには十分すぎる時間でした」


 はぁ……と湿った息を吐き出すと、野乃は言う。それから、すん、と鼻を鳴らし、


「もうどうでもいいや、って。私さえ学校に行かなければ、七緒はこれ以上複雑な思いをして傷つかなくて済むだろうし、寺島君の熱も冷めるだろうって……そう、思ってしまったんですよね。実際、そう思ったら、すーっと心も軽くなってしまったんです。ちゃんと話さなきゃって気持ちも本当でしたけど、夏休みに入るまで、どちらにも本当のことを話す勇気が出ないままで……。逃げ出してしまいたい気持ちもあったんですよ。ちょっとの間だけでいいから、せめて夏休みの間だけは、いろいろなことから解放されたくて……」


 そこまで言うと、野乃はとうとう、うっ……と喉を詰まらせた。


 抑えきれない嗚咽が静かな店内にひどく大きな音でこだまして、渉の胸は痛みを通り越して麻痺状態に陥る。