おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

 たまたま元樹君や嘉納さんも同じ気持ちだったから、三人で三川さんを校庭に連れ出すことができたけれど。元樹君も嘉納さんも三川さんも気持ちのいい子たちだから、野乃もある程度心を開いているとは思うけれど。


 それはすべて結果論で、そこまでに至る経緯はまったくの未知数だったのだから、どちらに転んでいたとしても、野乃にはひどく酷なことをさせてしまったことに、なんら変わりはない。


 言葉を失くす渉の向かいで、野乃が静かに言う。


「七緒とも寺島君とも、ちゃんと話そうって何度も思ったんです。本当です、七緒との友情は壊したくなかったから。でもだんだん、学校に行こうとすると体調が悪くなっていって……寝られないし、朝も布団から起き上がれなくて……」


 一学期の終業式の前日までは、それでもなんとか学校に行っていた、と野乃は言った。


 叔父夫婦――両親には、心配をかけたくないとの思いから、ごくごく普通にしていたのだという。


 体調を崩してしまうほどの重圧に押し潰されそうになりながらも、きちんと学校に行っていたのは、ちゃんと話すためでもあったし、七緒のことが心配だったからというのと、野乃自身がとても強い責任を感じていたからだったという。