それからずいぶんして、野乃はぽつりと、
「だから、学校に行かないことにしたんです」
と、言った。
野乃の前のテーブルには、彼女が流した涙の粒がいくつも落ちていた。声も上げずに泣いていたのだ。それだけで、野乃が今もどれだけ心を痛めているかがわかる。
「……結局私は、七緒には何も打ち明けられませんでした。七緒に話して誤解されるのも怖かったし、すっかり人が変わった寺島君も怖かった。クラスの目も、同じように怖かったんです。寺島君はクラスのムードメーカー的な存在でしたから、彼の突然の変化にクラスの人もだいたいすぐに気がついて、彼と仲のよかった私を見る目も、何かを疑っているような、訝しんでいるような、そんな目になっていったんです」
「そっか……」
そこで渉は思い出す。
三川さんにライバル視されていたとき、野乃は凛として言っていた。
『私には迷惑な話なんです』『もし私に同情されたって彼女が勘違いしたら、たまったもんじゃない』『私はもう、この話題には関与したくない』――そう、きっぱりと。
前の学校でそういうことがあったからこそ出た言葉だったのだとようやく合点がいく。
「だから、学校に行かないことにしたんです」
と、言った。
野乃の前のテーブルには、彼女が流した涙の粒がいくつも落ちていた。声も上げずに泣いていたのだ。それだけで、野乃が今もどれだけ心を痛めているかがわかる。
「……結局私は、七緒には何も打ち明けられませんでした。七緒に話して誤解されるのも怖かったし、すっかり人が変わった寺島君も怖かった。クラスの目も、同じように怖かったんです。寺島君はクラスのムードメーカー的な存在でしたから、彼の突然の変化にクラスの人もだいたいすぐに気がついて、彼と仲のよかった私を見る目も、何かを疑っているような、訝しんでいるような、そんな目になっていったんです」
「そっか……」
そこで渉は思い出す。
三川さんにライバル視されていたとき、野乃は凛として言っていた。
『私には迷惑な話なんです』『もし私に同情されたって彼女が勘違いしたら、たまったもんじゃない』『私はもう、この話題には関与したくない』――そう、きっぱりと。
前の学校でそういうことがあったからこそ出た言葉だったのだとようやく合点がいく。


