おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

「まさにそうです。寺島君の態度が豹変したのを見て、私もすぐにその可能性に気づきました。戸惑ったのは七緒も私も同じです。でも、事情を知っているのは私だけでしたから。何も知らない七緒は当然、すっかり元気をなくしてしまって……。調子に乗っていたのかな、ウザかったのかなって、ボロボロ涙をこぼしながら私に聞くんです」


「それは……野乃ちゃんも七緒ちゃんも耐えられない……」


 瞳を伏せてしまった野乃と同じように、渉もそう言ったきり、言葉が出てこなかった。


 語弊があるかもしれないけれど、高校生の恋はもっと単純なものだと思っていた。


 彼の気持ちもわからなくはない。プライベートなことを尋ねる野乃に徐々に好感を持っていく心の変化も、実に可愛らしいものだと思う。


 ただ、それがこんなにも複雑に絡み合ってしまうだなんて、一体誰が予想できたというのだろうか……。


 野乃は、親戚の贔屓目抜きにしても可愛い女の子だ。そういう子から、積極的に好みのタイプを聞かれたら。ほかの女の子より仲良くなれたら。


 付き合いたいと思うのはむしろ健全な思考だろうし、そのために障害をなくそうと思うのは、渉には思いつかない行動ではあるけれど、同じ男としてわからないでもなかった。