「そうなります。女子に声をかけるときにはだいたい私が最初に呼ばれて。ほかの子たちよりは近い距離にいたのは本当です。でも私はもちろん、全力で否定しました。付き合っている人も好きな人もいませんでしたけど、寺島君のことはクラスメイトとして好感を持っていて、何より七緒の好きな人です。友達の好きな人を自分も好きになるなんて、考えただけでゾッとしました。そこまでの強い気持ちがあれば、また話も違ったとは思いますけど、それにしたって、私は本当に好きとかそういう類いの気持ちは寺島君には持っていなくて。恋より友情を取りました。恋という感情こそありませんでしたけど」
「うん、わかってるよ。七緒ちゃんのために彼と仲良くなったんでしょう? そうしないと、プライベートなことまで聞ける仲になれない」
「……はい」
わかってもらえてよかった、と言うように野乃がほっと表情を緩める。コーヒーカップを手に取ってまた口元に運ぶと、ミルクと砂糖の入ったそれをゆっくりと飲む。
ただ、ソーサーに戻しても手が離れないのは、指先が冷えてしまっているからかもしれない。渉は無理もないことだとチクリと胸が痛む。
「うん、わかってるよ。七緒ちゃんのために彼と仲良くなったんでしょう? そうしないと、プライベートなことまで聞ける仲になれない」
「……はい」
わかってもらえてよかった、と言うように野乃がほっと表情を緩める。コーヒーカップを手に取ってまた口元に運ぶと、ミルクと砂糖の入ったそれをゆっくりと飲む。
ただ、ソーサーに戻しても手が離れないのは、指先が冷えてしまっているからかもしれない。渉は無理もないことだとチクリと胸が痛む。


