「私、昔からそういうのにけっこう敏感というか、わりとすぐ誰が誰を好きかがわかるほうだったんです。だから、七緒が彼――寺島《てらしま》君を好きだってことは、仲良くなりはじめてすぐにわかりました。七緒と寺島君は、中学こそ違いましたけど、通っていた塾が一緒だったそうで。でも、席も近くじゃなかったし、遠くから見るのが精いっぱいだったって、私に照れながら話してくれました。寺島君の志望校を塾の友達との会話から拾って、同じ高校を受験しちゃうくらい、本当に彼のことが好きで。だから私……」
「うん。彼女に協力することにしたんだね」
「はい。運のいいことに、高校では同じクラスになれたんですよ。私、七緒に協力してあげたい一心で、たくさん動きました。クラスが同じだと、違うクラスよりずっと動きやすいじゃないですか。私のほうにはちゃんとした目的があったし、七緒に頼まれてるっていう責任感もあって……。それこそ最初はどう声をかけたらいいか、ずいぶん四苦八苦しましたけど、林間学校で偶然、彼と同じ班になれたので。話す機会も自然と増えましたし、それとなく七緒を推したりしてたんですよ。七緒は班が違ったので」
そこまで言うと、野乃は静かにカップを口元に運んだ。それから一つ、息を吐き出し、ソーサーにカップを戻して、当時を思い出すように少し遠い目をした。
「うん。彼女に協力することにしたんだね」
「はい。運のいいことに、高校では同じクラスになれたんですよ。私、七緒に協力してあげたい一心で、たくさん動きました。クラスが同じだと、違うクラスよりずっと動きやすいじゃないですか。私のほうにはちゃんとした目的があったし、七緒に頼まれてるっていう責任感もあって……。それこそ最初はどう声をかけたらいいか、ずいぶん四苦八苦しましたけど、林間学校で偶然、彼と同じ班になれたので。話す機会も自然と増えましたし、それとなく七緒を推したりしてたんですよ。七緒は班が違ったので」
そこまで言うと、野乃は静かにカップを口元に運んだ。それから一つ、息を吐き出し、ソーサーにカップを戻して、当時を思い出すように少し遠い目をした。


