「ごめん、すっかり冷めちゃったよね。新しいのを淹れるけど、何がいい?」
とりあえず、コーヒーを飲み直そうと席を立つ。久々に詳細に思い出して胸が苦しくなったり精神的にどっと疲れたりもしたので、気分転換がてら、飲みたくなったのだ。
野乃も「じゃあ、渉さんと同じで」と言い、とりわけすぐに調べものに取りかかるというわけでもなさそうだった。
カフェインを摂りすぎると眠れなくなるのは周知のことで、だから一応のつもりで聞いてみただけだったのだが、すっかり渉に対してもドライになってしまった野乃は、絶賛シロップ漬けに夢中で席を立つ気配はない。
「……」
「……」
店内にはしばし、湯を沸かす音や豆を挽く音、コポコポとドリッパーにコーヒーが落ちていく音とともに蠱惑的な香りが充満する。
この香りを嗅ぐだけで心がほっと休まるような気がするのは、そういえば喫茶店でバイトをはじめてからだったなと渉は思う。
そのバイト経験がきっかけで、今はこうして自分が店主となって店を営んでいるのだから、人生とはつくづく不思議な縁で繋がっているものである。
とりあえず、コーヒーを飲み直そうと席を立つ。久々に詳細に思い出して胸が苦しくなったり精神的にどっと疲れたりもしたので、気分転換がてら、飲みたくなったのだ。
野乃も「じゃあ、渉さんと同じで」と言い、とりわけすぐに調べものに取りかかるというわけでもなさそうだった。
カフェインを摂りすぎると眠れなくなるのは周知のことで、だから一応のつもりで聞いてみただけだったのだが、すっかり渉に対してもドライになってしまった野乃は、絶賛シロップ漬けに夢中で席を立つ気配はない。
「……」
「……」
店内にはしばし、湯を沸かす音や豆を挽く音、コポコポとドリッパーにコーヒーが落ちていく音とともに蠱惑的な香りが充満する。
この香りを嗅ぐだけで心がほっと休まるような気がするのは、そういえば喫茶店でバイトをはじめてからだったなと渉は思う。
そのバイト経験がきっかけで、今はこうして自分が店主となって店を営んでいるのだから、人生とはつくづく不思議な縁で繋がっているものである。


