おいしい失恋の淹れかた~ここは恋し浜珈琲店~

 てっきりいつものように彼女が残していった荷物や渉の話の内容から答えを導き出すものだとばかり思っていたが、どうやら野乃にもこればっかりはわからないのか、それとも、渉が自分で結末を決めることに意味があると伝えたいのか、野乃は全権を渉に任せているような口振りだった。


「え、でも、そんな急に言われても……」


「渉さんも私と同じですね。怖がりで、意気地なしです。で、けっこう優柔不断」


「ええー……」


 なんとか体勢を立て直そうとするも、再びミニトマトのシロップ漬けに手を伸ばした野乃にぴしゃりと言い捨てられてしまい、また絶句するしかない。


 これは本当に、野乃は謎を解いてはくれない、ということなのだろうか。二年経ってもいまだに何もわからない状態なのに、そこからさらに結末を決めろというなんて……。


 元樹君に対してはなかなかドライだなと思ってきたが、まさか自分の身にも起こるとは思っていなかった渉だ。


「でも、気になることはありますから、少し調べてみようと思ってます」


 すると野乃は、頭を抱える渉に少し笑ってそう言う。


「調べたいこと……?」


「まだ秘密です」


「……そ、そうなんだ」


 しかし教えてくれる気も毛頭ないようで、渉は情けなく苦笑するしかない。