話し終わると妙な照れくささに襲われ、渉はじっと考え込んでいる野乃に思わず急かすように聞いてしまった。
もう二人のカップからは湯気が立たなくなっていた。お互いにあれからカップには口をつけていないので、黒い液面は両方とも凪いでいる。
「あの、渉さんはどういう結末だったらいいと思いますか?」
やがてたっぷりの間を空けて、野乃が聞いた。
「……え?」
「正直、私には、知世さんが何を思って渉さんと付き合ったのかも、会社を辞めて付いてきてまでオープン前に突然いなくなってしまったのかも、わからないんですけど……渉さんが知る範囲で知世さんにそれらしい変化や予兆めいたものがなかったんだったら、もう渉さんがこの恋の結末を決めてもいいんじゃないかと思うんです。確かに渉さんにだけ結末を決めさせるのはずるいと思いますけど、たぶん知世さんは、それを望んでいるんじゃないでしょうか。言い方は悪いですけど、掴みどころのない年上の女性に振り回れた渉さんには、そうやって自分で幕を引くことが必要なのかもしれませんよね」
「……」
そう言った野乃に、渉は思わず絶句する。
もう二人のカップからは湯気が立たなくなっていた。お互いにあれからカップには口をつけていないので、黒い液面は両方とも凪いでいる。
「あの、渉さんはどういう結末だったらいいと思いますか?」
やがてたっぷりの間を空けて、野乃が聞いた。
「……え?」
「正直、私には、知世さんが何を思って渉さんと付き合ったのかも、会社を辞めて付いてきてまでオープン前に突然いなくなってしまったのかも、わからないんですけど……渉さんが知る範囲で知世さんにそれらしい変化や予兆めいたものがなかったんだったら、もう渉さんがこの恋の結末を決めてもいいんじゃないかと思うんです。確かに渉さんにだけ結末を決めさせるのはずるいと思いますけど、たぶん知世さんは、それを望んでいるんじゃないでしょうか。言い方は悪いですけど、掴みどころのない年上の女性に振り回れた渉さんには、そうやって自分で幕を引くことが必要なのかもしれませんよね」
「……」
そう言った野乃に、渉は思わず絶句する。


