ちなみに毛色が白と黒のブチだったので、渉は密かに〝ホルス〟(ホルスタインから取った)を推していたが、彼女があんまり入院中の猫を見舞う際に『メンコ、メンコ』と言っていたので放っておくことにした。


 それはともかく、恋し浜に旅行に行ったのは、本当に偶然と言うしかない。


 正月休みに連泊でどこかへ出かけようという話になり、どうせだったら観光地ではないところに行きたいね、なんていうちょっとした冒険心も重なり。


 メンコもすっかり元気になった翌年の年明け早々に、メンコも連れて恋し浜へとたどり着いた。


「こんなにいい雰囲気なのに、この家、売り出し中なんだね……」


 ログハウス調の空き家を最初に気に入ったのは彼女だった。


 しんしんと雪が降り積もる中、コートを着込みマフラーも巻き、ついでにメンコも抱いて暖を取っていた彼女は、屋根の上にうず高く積もり続けるばかりの無人の家を見上げて呟く。


「ほとんど新築に見えるけど、誰かの別荘だった可能性もあるよな」


「ああ、それはあるかも。普通に住むなら、やっぱり普通の家だよね、普通」