そうして交際がはじまったわけだけれど、一学年上の彼女は当然、先に卒業していったし、無事に就職も果たしていた。


 院に進むことはなく、渉はその点で少しがっかりもしたけれど、自分もすぐにリクルートスーツに身を包み就職説明会やセミナーに奔走する毎日がはじまったので、それどころではないというのが正直なところだった。


 それでも交際はびっくりするほど順調だった。


 お互いに会える時間が減っても不平不満が出ることもなかったし、就職したてと、就活真っ只中というお互いの境遇に理解を示し合っていた。


 思えば前の年は彼女の就活があったし、その翌年は渉の就活と彼女の社会人一年目、さらに翌年は渉が社会人一年目となったのだから、計三年は学生の頃のように会いたいときに会えるというわけではない生活だったのだから、理解し合えない要素なんて渉たちには少しもなかったと言える。


 環境の変化でダメになるカップルも、渉の周りでも彼女の周りでも後を絶たなかったけれど、二人にはそれも関係なかったのだ。