夏合宿の際は恒例となっているバーベキューの席で、缶ビールを片手に彼女が大真面目な口調でそう言ったものだから、渉はここ何ヵ月か平穏に過ごせていた心臓が急速に活動をはじめたし、また春先のときのように盛大に戸惑った。
……いや、戸惑ったなんて生易しい表現では足りない。
めちゃくちゃ狼狽えたし、頭が真っ白になった。だってそれはつまり、彼女から告白されたというわけで、先輩の言っていたことはあながち間違ってもいなかったことの裏付けでもあったのだから。
その瞬間、渉の頭の中では、彼女や彼女を知る先輩から聞いた話が目まぐるしく駆け巡っていて、気づいたときには――。
「……俺でよかったら」
そんなことを呟いていた。
「そう。ありがとう。じゃあ、これからよろしくね」
まるで渉がそう返事をする未来が見えていたかのように、緊張しているふうでもなく、ドキドキしているふうもなくそう言った彼女は、どこか作り物めいた微笑を浮かべながら〝交渉成立〟的に握手を求め、渉は半ば放心しながらその手を握り返した。
……いや、戸惑ったなんて生易しい表現では足りない。
めちゃくちゃ狼狽えたし、頭が真っ白になった。だってそれはつまり、彼女から告白されたというわけで、先輩の言っていたことはあながち間違ってもいなかったことの裏付けでもあったのだから。
その瞬間、渉の頭の中では、彼女や彼女を知る先輩から聞いた話が目まぐるしく駆け巡っていて、気づいたときには――。
「……俺でよかったら」
そんなことを呟いていた。
「そう。ありがとう。じゃあ、これからよろしくね」
まるで渉がそう返事をする未来が見えていたかのように、緊張しているふうでもなく、ドキドキしているふうもなくそう言った彼女は、どこか作り物めいた微笑を浮かべながら〝交渉成立〟的に握手を求め、渉は半ば放心しながらその手を握り返した。