サークルの集まりがあるときくらいしか顔を合わせる機会がないためなのだろう、先輩からは又聞き感が漂っていた。


 しかし、でも、と付け加えると、


「ひょっとしたら、外舘君とは何かの波長が合ったのかもね」


 その先輩は、どこか楽しそうに言った。


「いや俺、いまだかつて記憶喪失になったことなんてないんですけど」


「いやいや、そういう意味じゃなくて。小湊さん、こっちから話しかけたら普通に受け答えしてくれるんだけど、自分からは滅多に話しかけなくなっちゃったから。そういう意味で外舘君とは何か近しいものでも感じたんじゃないのかなって推察するわけ。ほら、外舘君も雰囲気が独特だから。掴みどころがない感じとか。だから、記憶はないけど潜在的に好きだった人に似てるような気がしたとか、心に引っ掛かるとか、そんな感じで声をかけてみたんじゃない? 外舘君、年上に振り回されそうなタイプでもあるし」


「先輩それ、ちょっと偏見混じってますよ……」


「はは、ごめんごめん。でもまあ、どうしても気になるっていうなら、キャンパスから探して直接聞いてみたらいいと思うよ。彼女は基本、きちんとした人だから、こっちから話しかけるぶんにはちゃんと受け答えしてくれるはずだから」