「小湊さんね、一昨年、ちょっと事故に遭っちゃって――あ、打撲とか擦り傷とか、本当に軽いものだったんだけど――そのときに頭も打ったみたいで、それからあんな感じなんだよね。前までは普通に明るい子だったんだけど……噂では記憶もどこかに落っことしちゃったとかで、それまで仲のよかった子たちともだんだん距離ができていったんだよ。だから去年も今年も、新歓に顔を出すなんて本当に珍しいことでさ。外舘君に声をかけたっていうのも、いまだにちょっと信じられないっていうか」
「……記憶喪失ってことですか?」
「そんなに仰々しいものじゃないよ、本人が言うには。あの通り、普通に大学生活をやってるし、サークルにも入ってる。就職活動だってするって言ってるし、本当に日常生活には何も問題ない範囲での、ちょっとした記憶の欠落、みたいな感じなんじゃない?」
渉の顔がよっぽど神妙だったのだろう、その先輩は身振り手振りを交えて明るく笑って言った。
けれど、もしかしたら先輩にもどこまでが本当なのかわからないのかもしれなかった。サークルは同じだが、学科が全然違うらしい。
「……記憶喪失ってことですか?」
「そんなに仰々しいものじゃないよ、本人が言うには。あの通り、普通に大学生活をやってるし、サークルにも入ってる。就職活動だってするって言ってるし、本当に日常生活には何も問題ない範囲での、ちょっとした記憶の欠落、みたいな感じなんじゃない?」
渉の顔がよっぽど神妙だったのだろう、その先輩は身振り手振りを交えて明るく笑って言った。
けれど、もしかしたら先輩にもどこまでが本当なのかわからないのかもしれなかった。サークルは同じだが、学科が全然違うらしい。