「ねえ、天体観測、しない?」


 唐突にそう誘われ、渉が盛大に戸惑ったのは言うまでもなかった。


 しかし彼女は、言うだけ言ってさっさと先を歩いて行ってしまう。


「ま、待ってください!」と渉が追いかけたのもまた、言うまでもなかったことで、結局大学のサークル棟まで戻り、部室から望遠鏡を持ち出し、構内にある広場にて天体観測をするに至るまで、渉は彼女のそばを離れられなかったし、帰りはついでに最寄りの駅まで送った。


 あとで彼女と同じ学年のサークル部員にその話をしてみると、


「へぇ、珍しい。そんなこともあるんだねぇ!」


 大変驚かれ、渉はどういう意味かとまた戸惑うことになった。


 風変わりな人だなという印象はあの夜に鮮明に焼き付けられていたが、そんなに驚かれるものでもないように渉には思えていたからだ。


 大学は何かと変わり者が多い。この一年でそれをしっかりと認識し、順応していた渉には、普通に許容範囲だったのだ。


 しかし先輩は、違うと首を振る。