彼女――小湊知世は、一言で例えるなら透明な人だった。物理的にではなく、彼女から醸し出される雰囲気や空気感が、渉には透明に思えたという話だ。


 きっと、彼女が持っていた〝ある特徴〟も、その一端を担っているのだろう。とにかく渉は彼女を一目見たときから〝透明だ〟と感じていたので、彼女の印象はそれに終始する。


 知り合ったのは大学時代。


 同じサークルの一つ上の先輩で、新入生歓迎会のあったその日は、普段は顔を出さないらしい飲み会の席に珍しく彼女の顔もあった、というわけである。


 サークルは至って普通のものだった。


 天文サークルといって、その名の通り天体観測をするのが主な活動内容で、夏休みには合宿もあり、真夏の夜空を三十人程度のサークルメンバーで見上げ、写真を撮ったり記念撮影をしたり。それを学園祭で展示したりもした。


 彼女と関りを持つようになったのは、お互いに一学年上がってからだった。


 その年の新入生歓迎会にも彼女はすんなりと顔を出し、その帰り。二次会に行く様子もないのに、どうしてだか一向に帰ろうとしない彼女に不思議に思って声をかけると、