夕飯後。後片付けを終え、食後のコーヒーとミニトマトのシロップ漬けをデザートにしながら、渉と野乃は店内の適当な席に向き合い座っていた。


 店はもう閉店した。長い話になるだろうことはわかっていたし、どうせ午後六時を過ぎれば客足はぱったり途切れる。


 尋ねると野乃は、大皿に盛ったシロップ漬けを何個かまとめて小皿に取り分けつつ、


「うーん、どうなんでしょう。毎日遅くまで練習してるみたいですけど、汐崎君たちから聞くと、二回戦突破がいいところかもしれない、とかなんとか。勝ってほしいなとは思いますけど、私立はやっぱり強いですから。公立校はちょっと歯が立ちませんよね」


 ぱくり。皮がしわしわになったトマトを一つ、口に含んだ。


「そっかぁ。でもまあ、私立を引き合いに出されちゃうと、二回戦が限界かなぁ」


「でも、野球部の人たちは楽しそうですし。今年の邦陽高校は、もしかしたらダークホースかもしれませんよ。実際に試合をしてみなきゃ、結果はわかりません」


「そうだね、頑張ってもらいたいね」


「はい。力を出し切ったって思えるまで、頑張ってほしいですよね」