清々しい笑顔で言い、くるんと上を向いた彼女のまつ毛と同じように、しっかりと上を――前を向き、これからのことを、そう締めくくった。


「でも、つらくなったら言えよ? 近くにいるのに頼ってもらえないのもつらいし」


「そうだね。そのときはクラスメイトとして助けてもらうよ」


 元樹君の気遣いに、そう淀みなく答えた三川さんは、この土日でもう完全に吹っ切ったのだろうか。


 どう告白したのか、どんな告白の言葉を選んだのか、間近で聞いていた野乃は渉には話してくれなかったけれど。


 でも元樹君がふっと笑って「そうする」と言ったから、きっと、告白した側も、された側も、これから育まれるだろう友情の間にもうそのことは持ち込むつもりはちっともないのだろうことだけは、渉にもわかった。


「渉さんも一緒に食べましょうよ」


 席から野乃が声をかけると、残りの三人も一斉に渉に微笑む。渉はいつものように眼鏡の奥の瞳をふっと細め、「じゃあ、ご相伴に預かりましょうか」と四人のもとへ向かう。


「この桃、すっごい甘いんですよ」


 そう言った野乃からフォークに差した桃を一切れもらって口に入れる。


「ほんとだ、小ぶりだけどすごく甘い」