「バカだね」


「うん、目も当てられないバカだね」


「強がらなくてもいいんだよ、汐崎君が一番気まずいのはわかってるし」


 女子三人がそれぞれに口を開いた。


 言わずもがな先の二言は三川さんと野乃によるもので、嘉納さんは優しさ溢れる気遣いの言葉を口にする。


「バカってなんだよ……。もう外も暗いんだし、三川と嘉納を家まで送ってやんなきゃいけねーんだよ俺は。お前らものんびり喋ってねーで早く飲め。泡が消えたらラテアートでもなんでもなくなるんだぞ、こんな二歳児みたいなわけわからん絵なんて」


「ふっ。私、汐崎のそういうとこ、いいなーって思ってたんだよね」


「ていうか、渉さんの絵を貶すのはやめてくれる? せめて三歳だよ、これは」


「野乃ちゃん、それ……くふっ、あんまり変わらなくない?」


 ところが、いくら元樹君が虚勢を張っても、野乃たちにはただ面白いだけだったようだ。


 三人で顔を見合わせるとケタケタ笑いはじめてしまい、元樹君も渉も言葉を失くす。