カウンターでコーヒー豆や使った器具の後始末をしていると、失笑した三川さんと野乃の会話が聞こえてきた。
三川さんはもうすっかり毒気が抜かれていて……いや、渉の先鋭的なラテアートもどきを見て笑うしかなくなったようで、店に入ってきた当初よりずいぶんと雰囲気が丸く、ライバル視していた野乃にも砕けた言葉遣いをしている。
そんな二人を見て嘉納さんもクスクス笑い、女子三人の空気は柔らかい。
ただ、その向かいにいる元樹君だけは、そういうわけにもいかないようだった。
さっきの鋭いツッコミはすっかり消え去り、じっと俯き、所在なさげにそこにいる。
でも、それも無理もない話だった。たとえ少しずつ気づきはじめていた可能性はあったにしても、面と向かって告白され、その場で断ることになったのだ。
あれから元樹君はずいぶんと三川さんのことを考えただろう。どうしてああいう行動を取ったのか、その意味を真剣に考えただろう。
それでも元樹君の気持ちは動かなかったのだ。自分のせいで女の子が泣いた。でもどうすることもできない。
……ひどく心を痛めているに違いない。
三川さんはもうすっかり毒気が抜かれていて……いや、渉の先鋭的なラテアートもどきを見て笑うしかなくなったようで、店に入ってきた当初よりずいぶんと雰囲気が丸く、ライバル視していた野乃にも砕けた言葉遣いをしている。
そんな二人を見て嘉納さんもクスクス笑い、女子三人の空気は柔らかい。
ただ、その向かいにいる元樹君だけは、そういうわけにもいかないようだった。
さっきの鋭いツッコミはすっかり消え去り、じっと俯き、所在なさげにそこにいる。
でも、それも無理もない話だった。たとえ少しずつ気づきはじめていた可能性はあったにしても、面と向かって告白され、その場で断ることになったのだ。
あれから元樹君はずいぶんと三川さんのことを考えただろう。どうしてああいう行動を取ったのか、その意味を真剣に考えただろう。
それでも元樹君の気持ちは動かなかったのだ。自分のせいで女の子が泣いた。でもどうすることもできない。
……ひどく心を痛めているに違いない。