カフェラテを淹れながら、ちらちらと漏れ聞こえてきた話では、どうやら三川さんは野乃や嘉納さんの前で元樹君にフラれてしまったらしい。さっき倉庫に呼びに来た野乃の表情がひどく沈痛だったのは、三川さんの失恋を目の当たりにしてしまったからだろう。


 もっとも、渉にコーヒーを淹れてほしいということは、つまりそういうわけで。三川さんはハンカチで目元を拭い、隣に座っている嘉納さんが彼女の背中を優しく撫でている。


「……ごめん、あんまりこういうの得意じゃないんだけど、みんなでどうぞ」


 そう言って席にクマのイラストを描いたカップを運ぶ。


 得意じゃないなんてもんじゃない、ラテアートをしようだなんて少しも考えたことがなかったので、かなり不細工なクマちゃんになってしまい、もうなんとお詫びしたらいいか言葉も浮かばない。


 というか、それ以前にクマの原形を留めているのかさえ怪しい出来栄えだ。面目ない……。


「……」


 案の定、運ばれたカップを目にした四人は声も出ない様子だ。揃いも揃ってじっとミルクの泡の上に描かれた何かの絵を凝視し、どうフォローしようかと言葉を探している。


「だ、だから野乃ちゃんには言ったんだよ、ちょっと頑張ってみるから、って」