「私、三川さんを迎えに行ってきます……!」


「うん、いってらっしゃい」


 そこからは、本当に早かった。


 乱暴に靴を脱ぎ捨てた野乃は、靴下のまま校内に入っていく。少しすると上の階から声が響いてきて、その声がだんだん大きくなっていった。


 どうやら野乃は、三川さんを無理やり外に引っ張り出そうとしているらしい。何を話しているのかまでは聞こえないが、響いてくる野乃の声ではない声の調子は大いに戸惑い、頑なに嫌がり、隙あらば逃げようとしている感がとてもよく窺えるものだった。


「うぇっ? 渉さん?」


 とそこに、タイミングよく元樹君が現れた。その後ろには嘉納さんの姿もあり、驚いて目を丸くした二人は、どうしてここに渉がいるんだろうという顔をした。


 しかしすぐに上の階から徐々に近づいてくる声に気づき、顔を見合わせる。


「今日は寝坊しちゃって野乃ちゃんに弁当の用意ができなかったから。俺はそれを今届けたところで、野乃ちゃんは上にいる。たぶん、二人が思ってることと一緒のことをしてるんじゃないかな。片づけまで終わったら、今日は四人で店においで。じゃあね」