教師や周りの実行委員たちにそう断りを入れた野乃がぐんと渉の腕を引いたので、渉は少しつんのめりそうになりながらも会釈をする教師たちに会釈を返す。


 野乃はズンズンと先を急ぎ、ジャージの襟首から覗くうなじまで真っ赤にさせている。


 ああ、これは正真正銘、良かれと思ってが空回りしたパターンだ……。


 渉はとたんに申し訳ない思いに駆られ、野乃に腕を引かれながら、しゅんとなる。


 野乃が嬉しくなければこんなのはいい迷惑にしかならないのだ。なんとなく顔も知らない三川さんに対して安易な気持ちで踏み込もうとした三日前のことが重なり、気分はずんと沈み込む。


「ごご、ごめんね……。こういうの、迷惑だったよね……」


 昇降口に入ると、そこは外の陽気とは打って変わって涼しかった。やっと足を止めた野乃は、渉の腕を取ったまま「はあ……」とため息を吐き出し、顔を俯けたまま、


「……いえ、あの様子じゃ来るとは思ってましたけど、ちょっと早くてびっくりして」


 まだ多少気が動転しているのだろう、上ずった声で言う。


「いえ、今の言い方は失礼でした。お弁当、ありがとうございます」