購買や自販機で適当に買って済ましますから、と野乃は恐縮しきりだったが、体育祭当日の朝なのにいつもの低血圧が祟って弁当の用意ができなかった渉は、昼休憩に間に合うように今から作って届けるつもりなのだ(野乃も渉も起きられず、実に慌ただしい朝だった)。


 弁当を届けがてらちょっと覗いてみようかとも思う。


 夏休み前の三者面談はまだ先だ。


 こんな機会でもなければ、野乃の学校での様子を自分の目で見ることなんてできないだろうし、弁当を届けに来た保護者なら、多少の見学は許してもらえるかもしれない。


「……よし、できた」


 今日は奇しくも時間に余裕ができたので、弁当はだいぶ凝った中身になった。


 俵型に握った、ゆかり、高菜、おかかの小ぶりの三色おにぎり。手作りの唐揚げに、卵焼き、ナポリタン。


 その隙間を飾るのは、近所に住む家庭菜園が趣味のおばあさんがよくおすそ分けしてくれるレタスやミニトマト、さやいんげんなどの新鮮な野菜たちだ。


 家の庭先に小さいながらもハウスを作っているそうで、一足早く夏場の野菜も色づくらしい。