電話は叔父からだったり叔母からだったりするのだけれど、そうすると二人とも「野乃が学校に通っているなら、それだけでいいから」と恐縮しきりの渉に笑うのだ。


 それもあって、渉もできることなら早く野乃に本当の意味で立ち直ってもらいたいと、あの日は強引な態度に出すぎてしまったところがある。


 それで結局、野乃との間にいかんともしがたい溝ができてしまったのだから、本末転倒もいいところだ。


 別に叔父夫婦にきちんと保護者代理を務めているところを見せたかったわけではない。


 不登校の理由を知ってどうするとか、じゃあこうしたら、と差し出がましくアドバイスをしようとも思っていない。


 ただ渉は、一度でいいから野乃に自分のために涙を流してほしかった。自分のためだけを思って泣いて、そのあとは渉が淹れたコーヒーで笑ってほしかったのだ。


 野乃が元気にまた羽ばたけるようにと、そう思ってのことだった。


 でも、それも今なら、自分のエゴ以外の何物でもなかったのだとわかる。珠希さんや拓真君が新しい場所へと飛び立っていく姿を見送りながらも、羨ましく思ったのもある。