初冬の薄氷のようなそれを間近で見て感じていながら、どうしてあのときは無理に聞き出そうとしてしまったのだろうか。


 あのまま外に飛び出していかず、部屋に籠ってくれたことも、人の気持ちを推し量りすぎてしまう野乃の精いっぱいの気遣いだったのだと最近になって気づいて、渉は自分のあまりの不甲斐なさに唇を噛みしめる。


 叔父夫婦――野乃の両親からは、娘を預かってもらって悪いね、のほかに、決まって最近の様子と、どうして不登校になったのかを話してくれる気になったのかどうかを電話口で尋ねられている。


 野乃を単身、送り込んでくるような人並外れた行動力と決断力を持つ叔父たちではあるが、やはり娘のことを思わない日はない。


 その電話は必ず野乃が学校に行っている間にかかってきて、野乃に対するその気遣いにも、胸がじんわり温かくなったり、反対にぎゅっと絞られるような感覚がする。


 そうして前半部分については、野乃や元樹君から聞いた学校の様子を話し、後半部分についてはいつも「すみません、まだ……」と受話器を握ったまま頭を下げるしかなかった。