「ううん。私だってさっき、言っちゃえって思っちゃったもん。本当に迷惑だと思ってるなら、汐崎君にどうにかしてもらったほうが手っ取り早いじゃん。でもそれをしないのは、宮内さんが優しくて強い人だからなんだと思うよ。人の気持ちを一番に考えられる人なんて、そうそういないし。もし私たちが勝手に言っちゃったとして、それで汐崎君が取る態度で三川さんがどう思うかなんて、普通、そこまで考えないよ。でもそれを瞬間的にいろいろ考えられる宮内さんは、やっぱり優しくて強いし、一本筋が通ってると私は思うな」


「……う、うーん……」


「だから汐崎君も放っておけないんだよね。私もそうだけど、ちょっと心配になるときがあるっていうか、無理してるんじゃないかって思うときもけっこうあるし」


「……」


 そう言われた野乃は、今度は完全に口ごもってしまった。


 もしかしたら、以前、元樹君が話してくれた〝クラスで少しずつ喋る相手もできてきた〟という子は嘉納さんのことなんじゃないかと、渉ははっと思い至る。