ここまでお膳立てされてもわからないなんて、ある意味無垢で天然なのだろうけれど、これではいよいよ三川さんが不憫だ。
元樹君が『筋が違う』と正面切って言ってくれたことは、保護者の立場からすると本当に有難い一言だった。けれど野乃は、敏感で聡い子だ。
三川さんの気持ちをわかった上で元樹君を煙たがっているのだから、野乃も野乃で気苦労が絶えないだろう。
「いえ、渉さん。私は何も言いません」
すると野乃が凛と言った。悩んでいるようではあるが元樹君の威勢の良さのおかげで軽かった雰囲気も、野乃のその凛と通る声できゅっと引き締まる。
「正直、私には迷惑な話なんです。三川さんが汐崎君に対して何を思っているのかを教えたら、汐崎君の態度が変わらない保証なんてありません。それを見た三川さんが変に勘ぐったりしちゃったら、もし私に同情されたって彼女が勘違いしたら、たまったもんじゃないですよ。これ以上ややこしくなるのは勘弁してください。汐崎君も、どうしても知りたいんだったら三川さんに直接聞いて。私はもう、この話題には関与したくない」
「ご、ごめん……」
「そうだよね。ごめんね野乃ちゃん。俺も面白がってた。……反省してる」
元樹君が『筋が違う』と正面切って言ってくれたことは、保護者の立場からすると本当に有難い一言だった。けれど野乃は、敏感で聡い子だ。
三川さんの気持ちをわかった上で元樹君を煙たがっているのだから、野乃も野乃で気苦労が絶えないだろう。
「いえ、渉さん。私は何も言いません」
すると野乃が凛と言った。悩んでいるようではあるが元樹君の威勢の良さのおかげで軽かった雰囲気も、野乃のその凛と通る声できゅっと引き締まる。
「正直、私には迷惑な話なんです。三川さんが汐崎君に対して何を思っているのかを教えたら、汐崎君の態度が変わらない保証なんてありません。それを見た三川さんが変に勘ぐったりしちゃったら、もし私に同情されたって彼女が勘違いしたら、たまったもんじゃないですよ。これ以上ややこしくなるのは勘弁してください。汐崎君も、どうしても知りたいんだったら三川さんに直接聞いて。私はもう、この話題には関与したくない」
「ご、ごめん……」
「そうだよね。ごめんね野乃ちゃん。俺も面白がってた。……反省してる」