「ああ、もうっ! 女子ってほんっっと、わっかんねー!」


 その日の恋し浜珈琲店では、重くどんよりと垂れ込める分厚い雨雲を吹き飛ばすがごとき元樹君のそんな遠吠えが、もうかれこれ四回は響いていた。


「そんなもんでしょ、女子なんて。ていうか、汐崎君が鈍感すぎるんだよ。世話焼きでも庇護欲でもなんでもいいけど、わかったら必要以上に構わないでくれる?」


 対する野乃は氷点下並みのクールさでそんなことを言う。その隣では、嘉納《かのう》響希《ひびき》さんという女の子が、どうしたらいいのかわからずオロオロするばかりだった。


 事の発端は、二日後に迫った体育祭の練習中だったという。


 実行委員の仕事でクラス全員参加のムカデ競争の練習になかなか顔を出せなかった野乃を、実行委員に祭り上げたクラスの一女子グループが責め、推薦したのはお前たちなんだからそれは筋が違うだろうと割って入った元樹君にまで火の粉が降りかかり、最終的には「そうやって汐崎はいつも宮内さんを庇う!」と、グループの中の一人に泣かれたらしい。