「でも、どう声をかけたらいいのか……」


 早々に二階へ上がった野乃を気遣うようにそちらに視線を投げた元樹君にそう言われても、渉は困るばかりだ。


 委員に決まったから体育祭が終わるまでは帰りが遅くなる、と言われたとき、そうじゃないかとは思った。野乃があまり楽しそうではなかったからだ。


「何言ってるんですか、ここでの保護者は渉さんでしょう」


「そうなんだけど……一度、声のかけ方を間違えると、次が怖いんだよ」


「……」


 むっとした顔で元樹君が黙る。


「……そんなの、渉さんらしくもない」


「ごめんね、今日も送ってくれてありがとう」


 言って、あからさまに追い出そうとしたら。


「最近の渉さんのコーヒー、正直、美味しくないっす」


 元樹君は悲しそうに微笑して、ドアベルの向こうに消えていった。


「……それは俺も自覚してるよ」


 ズバズバ言うなぁ……と苦笑しながらも、渉もその通りだと認めるしかなかった。