それを潮に食事を再開した野乃は、ソースをたっぷりかけたロースカツを頬張り、続けてご飯も口に入れた。


 ハムスターさながらにパンパンに膨れた頬は、もぐもぐと口を動かすたび、十代らしくツルツル、ピカピカと蛍光灯の光に反射して血色良く光っていた。


 そういえば、ここへ来てから野乃はずいぶん日に焼けたなと思う。


 春から完璧に日焼け対策をしているけれど、陶器のように真っ白だった頬や腕は、十年ぶりに再会した日と比べても、かなり健康的な色を取り戻しているように見受けられる。


 そりゃもちろん、日焼け止めなんて塗らない元樹君と並べば、ゴボウと大根ほどに違いは歴然としているけれど。


 この通りよく食べるし、元樹君ともよく微笑ましい口ゲンカをしているし、普通の高校生らしさがずいぶん垣間見えるようになった。


「……野乃ちゃん、さ」


「はい」


「どうしてここへ来ようと思ったの?」


「え……」