弘人さんにも美味しいと思ってもらえていたらいいな。
そんなことを思いながら、渉はそのカップをそっと棚に戻した。
「あれ、でも、どうしてエスプレッソに砂糖なんですか?」
向かい合って揚げたてのカツを頬張っていると、ふいに野乃が尋ねた。先ほどは納得したが、どうもそのことが気になり、ふと思い出したようだった。
渉は、口に入っているカツを飲み込み、味噌汁で喉を湿らせてから、
「エスプレッソはイタリア生まれなんだけどね。イタリアでは、コーヒースプーンに山盛り一杯の砂糖を入れて、あまり混ぜすぎずに早めに飲むのがエスプレッソの楽しみ方として広く普及しているんだ。残った砂糖はスプーンで掬って食べるのがイタリア流で、日本ではたぶんそんなに知られていないと思うんだけど、本格的なエスプレッソマシンを買うくらいエスプレッソが好きだった弘人さんなら、知っていてもおかしくないと思うんだよね。だから、俺に向けてのちょっとしたメッセージだったんじゃないかって」
「メッセージ……?」
「うん。完全に俺の願望だけど、ありがとうっていう」
眼鏡の奥の瞳を細め、ちょこんと首を傾げて聞き返す野乃に笑った。
そんなことを思いながら、渉はそのカップをそっと棚に戻した。
「あれ、でも、どうしてエスプレッソに砂糖なんですか?」
向かい合って揚げたてのカツを頬張っていると、ふいに野乃が尋ねた。先ほどは納得したが、どうもそのことが気になり、ふと思い出したようだった。
渉は、口に入っているカツを飲み込み、味噌汁で喉を湿らせてから、
「エスプレッソはイタリア生まれなんだけどね。イタリアでは、コーヒースプーンに山盛り一杯の砂糖を入れて、あまり混ぜすぎずに早めに飲むのがエスプレッソの楽しみ方として広く普及しているんだ。残った砂糖はスプーンで掬って食べるのがイタリア流で、日本ではたぶんそんなに知られていないと思うんだけど、本格的なエスプレッソマシンを買うくらいエスプレッソが好きだった弘人さんなら、知っていてもおかしくないと思うんだよね。だから、俺に向けてのちょっとしたメッセージだったんじゃないかって」
「メッセージ……?」
「うん。完全に俺の願望だけど、ありがとうっていう」
眼鏡の奥の瞳を細め、ちょこんと首を傾げて聞き返す野乃に笑った。