元樹君も元樹君で、そんな野乃をすっかり受け入れている様子だし、なかなかいいコンビかもしれない。


「でもさ、一個、よくわからないんだけど」


 すると、元樹君が頬杖をついて野乃と同じ窓の外を見やった。野乃は握り込んだ手のひらを緩くほどき、元樹君には顔を向けずに「なに?」と問う。


「弘人さんは、なんで好きなのにそれを告(い)わないままだったんだろう? 野乃が言ってたことも、拓真さんや渉さんが〝戦う前から負けた〟〝変なプライド意識〟って言ったこともわからなくはないんだけど、そんなに好きなら、俺だったら告うと思うんだよ。結果的に弘人さんは珠希さんを置いていくことになっちゃったけど、まさか自分がそうなると思ってたわけでもないだろうし、そこんとこが、なんかモヤモヤしてんだよね」


「……子供だねぇ」


 しかし野乃は、またもやドライな口調でそう言う。ちょっと小バカにしたようにも聞こえるのは、野乃がわざとそう聞こえるようにしているからなのだろうか。


「はぁ? 野乃だって俺と同い年だろ。バカにすんなよ」


「あ、やっぱそう聞こえた? ごめん、ごめん」


「なっ……!」