そんな二人を一瞥して、野乃は窓の外に目を向けると、その理由を話す。


「珠希さんは、先生についていくことを決めて弘人さんとの思い出を整理しようとしてたけど、そう簡単に整理できるものじゃない。もう亡くなってしまっているんだから、なおさらのはずでしょ。でも、これからを生きていく人にとっては、いつかはサヨナラしなきゃいけない思いっていうのも、きっとあって当たり前なんだと思う。珠希さんは、誰かに〝それでいい〟って言ってもらいたかっただけだと思う。拓真さんの話を聞いてたら、もしかして弘人さんも珠希さんのことが好きだったんじゃないかと思ったの。珠希さんが先に先生の話をしてくれたのも大きい。こじつける、なんて言い方をしたら全員に失礼だけど、でも珠希さんには、胸を張って先生のところへ行ってほしかった。先生に対しても弘人さんに対しても、後ろめたい気持ちでいてほしくなかったんだよ」


「そ、そうなんだ……」


「うん」


「うん、って。なんか野乃、俺の知らないところでいろいろ考えてんだな……」