五月も下旬になると、よりいっそう日が長くなる。洗いざらしとなった雨上がりの薄茜色の空に薄っすらと架かる虹のアーチが、店の中からでもよく見えた。


「でも、あんな少ない情報量で、よく弘人さんが珠希さんから身を引こうと思ってたんじゃないかってわかったよな。拓真さんだって、野乃の推理を聞いて思い出したところがあったし、俺なんてさっぱりわかんなかったのに、なんかすげーよ……」


 しばしその虹を三人で眺めていると、感心したように元樹君が口を開いた。いや、感心したというよりは、野乃の洞察力に戦々恐々といったところかもしれない。


 文香さんと上尾さんのときもそうだったけれど、野乃がお客様と対峙しているとき、渉や元樹君はすっかり蚊帳の外だ。


 二度も彼女たちの失恋を救い、送り出した野乃を間近で見ていると、やはり渉も野乃に一種の畏怖のような念を抱いてしまう部分がある。


「そんなの、こじつけに決まってんじゃん」


 しかし野乃は表情一つ変えずに、しれっと言う。


「……は、え……?」


 渉と元樹君の空気の抜けたような声が見事にシンクロし、一瞬の静寂を作る。